ブログ

ねじれ②

ときわのもり動物病院

こんにちは〜

疲れが溜まってきたり気分的にモヤモヤしてくるとサウナに行きたくなる林です。

サウナ&水風呂は気持ちいいし、暑すぎたり冷たすぎたりするから軽い瞑想状態になるんですよね。

#迷走かもしれません

気持ちのいいこと、気分のいいことをするに限ります👍


さて、前回の続き。

私が感じている飼い主さんと動物病院とのねじれに関して。

というよりも人間を含めての医療とのねじれともいうべきなのでしょうか・・・


まず大前提として言っておきたいのが、今までの医療の進歩は確実に寿命を延ばしているだろうし、助けられなかった命を助けられるようになってきていると思います。

事実、私も西洋医学中心の今の動物医療でやってきましたし、これからも使えるものは使って行きます。

ステロイドなんかはよく「怖い薬」みたいなことを言われますが、キレのいい薬ですしよく使っています。


だからこそ言いたいんですよね。

もうそろそろ今のやり方は限界かもしれない、って。


前回も書きましたがこの数十年で犬を初めて飼う方が増えました。

犬の頭数もどんどん増えて行っていました。

犬猫を中で飼う、という今まで何千年、何万年もしていた生活習慣と異なる飼い方にもなってきました。


そうすると今までの飼い方よりも確実に親密度は増し、本当に家族の一員となり、今まででは気が付かなかった小さな変化にも気がつくようになりました。

当然動物病院に行く頻度は高くなり、検査や薬の頻度も増してきています。


でも最近いろんな方のお家にお邪魔し、動物病院での診察の時よりもはるかに長い時間飼い主さんと話していると、このままの医療を続けるのって結構危険なのかもしれない、って思うことがあるんです。

特に最初の子よりも2頭目、3頭目になり、1度は動物の「死」を経験している方に多い意見です。


「前の子は色々できることをやりたいって思ってやったけど、この子は何かあってもなるべく穏やかにさせてあげたい。」


結構いろんな人から言われます。

「頑張らせすぎてしまったな・・・」


動物を助けることはもちろん必要なことです。

事実、私は夜間の電話番や宿直のある生活を6年やった後、24時間体制の救急病院に約3年働いていました。

救急病院の大切さを体感し、処置を行なったことで助かった命も目の当たりにしています。


でもそれってあくまでも「救急疾患」での話で、その前に出てきた頑張らせてしまった、という飼い主さんの意見って「慢性疾患」、つまり高齢になってそろそろ色々老いてきたな、ってなった子に対する医療が多いんです。


動物も人間も死ぬ時は死にます。

これは確実なことです。

どうやっても抗えないです。

救急で働いていたからよくわかります。

「なんでこんな重い子が生き返るんだろう」ってこともありますし、「なんでこんなにもあっさり死ぬんだろう」ってことも多くありました。


絶対に死ぬんですよね、最期は。

これは今の医療、そして世の中的にはタブーとされているような気がします。

私はまだまだ死なない、うちの子はできる限り長く生きてほしい。

こう思うのはある意味当然です。


でも動物たちって「まだまだ生きていける!」なんて思っていなくて、「来週これをしたい」なども思っていない。

「もっと生きていたい!!」って思いながら入院や治療をしている子もいないんですよ。


ただただ目の前にある現実だけ。

どんなに重い病気になって、どんなに身体が動かなくても、飼い主さんのそばにいて、ゆっくり寝て、ご飯が食べられて、大便小便が出ていればそれで幸せなんだと思います。

もし「この病気をなんとしてでも治して長生きするぞ!!」って思っているんだったら、みんな喜んで病院に入っていくでしょうし、病院の方が治ると思っていたら家になんて帰りたがらないです。

でも現実は違う。

尻尾を振っているのはいつも飼い主さんと会った時だし、おへそを出して寝ているのはいつも家です。


そういう一つ一つの仕草って飼い主さんの中に残っているんですかね。

だから「今度はあそこまで頑張らせたくないな」っていう意見も出てくるんだと思います。


救急疾患以外のものに関しては、私は
・食事
・生活環境
・ストレスの有無

がその後の寿命にも大きく関わってくると思っていますし、なにしろそこを整えた方が圧倒的に生きていて楽しいはず。

西洋医学は救急疾患は得意ですが、慢性疾患は苦手としています。

薬は症状を抑えるだけであり、病気を治すのは自分自身、そしてそれを助けるのは飼い主さんです。

我々はそのお手伝いにすぎません。


でも今の医療って何かあるとすぐ検査、そして薬。

食事や生活環境を改めたり、動物のストレスの元を探したり、もっというと飼い主さんの不安を解消して家でリラックスして過ごしてもらう、っていう行為はあんまり見られません。


「動物病院に行くとすぐに検査、薬、そして手術って言われる」

これもよく聞かれます。


飼い主さんたちはなんとなく気がついてきてしまっているんです。

このままでいいのだろうか?って。


そこには人間の医療が大きく関わっていると思うんですよね。

人間の医療では今、薬の出し過ぎが問題になってきています。

風邪と言われて抗生剤を処方される、ってことも問題になってました。

血圧の薬もボケにつながる可能性もあることも言われています。

そして薬の副作用を打ち消すために薬を飲み、それが様々な診療科で行われることで、10種類を超える薬を飲んでいる人も多くいることも事実です。


さらには延命治療。

少し前までは意識がなくなった方に対して胃ろうチューブや人工呼吸器をつけることも普通でしたが、その後の経過を見ていた家族はそれを拒否するようになってきています。

実際に私も身内がそういう状態になったことがありますが、見てられませんでした。

私なら絶対にやりたくありません。

ご飯が食べられなく、意識もなくなったら、潔く死にたいと思っています。


それがだんだん人間の方だと当たり前になってきている。


でも動物だと最後の最後まで治療をしてしまうことが多いんですよね。

これはある意味ではしょうがないこと。

だって動物たちは家族、というよりもずっと「子供」みたいな存在ですから。

ずっと面倒を見てきたのも事実だし、そんな子が先に死んでしまうのも事実。

ここが一番飼い主さんの辛いところなんだと思います。


いずれ死ぬことはわかっているし延命もあんまりさせたくない、高齢になって頻繁に病院に行って検査や薬が増えていくのは・・・

って思っていても可愛い動物が老いていくのを黙って見ていることはできないですよね。


それを最も感じたのがこの数十年だったんだと思います。


でもだんだん飼い主さんは変わってきていると思います。

飼い主さん自身も歳を重ね、人間の医療に対しても思うところが大きくなってきた、っていうのもありますし、「自分の最期はこう迎えたい」っていう思いも出てくるんだと思います。

そして「コロナ」をきっかけに命との向き合い方も確実に変わってきている。


対して今の動物医療はますます高度化し、検査や薬が増えてきているのも事実。

動物の頭数は年々減ってきているにも関わらず動物病院は増え続けており、そして動物にかける医療費も年々増えてきている。


なるべく穏やかに最期を迎えさせてあげたい飼い主さんと今の動物病院の現場は、結構食い違ってきていると思うんです。

人間の医療が転換期を迎えていると同時に、動物の医療も転換期を迎えています。


コロナをきっかけにみんな気がつき始めています。

「ワクチンはなんだったの」

「マスクはなんだったの」

「熱が出てるから病院に行っているのに、発熱の人は見てもらえないって、病院ってなんなの」


このような人間の医療に対する疑問、そして延命処置などへの疑問が、今度は動物に対して起こって来ていると思うんです。

ちょっと長くなってしまったしなんかまとまってないですが、最近すごい感じているねじれについて書いて見ました。

これは一意見ですし、持っている想いは皆さん違うと思います。

でもいずれ必ず「死ぬ」ことは確実です。

誰だっていつ死ぬかわからないけど、絶対にそのうち死ぬんです。

だったらいつ死んでもいいようにしっかりと生きなければ!って思っています。

そしてそれを動物たちはわかっているような気がします。

#いや、今回のブログ長っ!!


では🤗


メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

執筆者
林 潔高
林 潔高
獣医師
林 潔高(はやし きよたか)

2012年に日本大学を卒業後、静岡市内および東京の動物病院で勤務。

2019年から2年半、24時間体制の動物病院「動物救急センター」で勤務。

2021年より東京の動物病院で院長として勤務した後、2023年に独立。

現在、静岡と東京を中心に往診をしております。

おすすめの記事
こんな記事も読まれています
記事URLをコピーしました